千葉県北西部で昨年5月、一軒家のごみがたまった一室から、足が壊死(えし)した状態の高齢女性が救出されていたことが分かった。女性は生活意欲などの衰えから身の回りのことができなくなるセルフネグレクト(自己放任)の疑いがある。

引用:毎日新聞(2017年2月17日

記事によりますと、女性は60代後半で、夫はすでに亡くなっていました。自治体の職員が安否確認に訪れましたが、娘が「母親は会いたくないと言っている」と拒んでいたそうです。

女性の食事は娘が運び、トイレはおむつで済ませていたという。救出時、娘は「母のことを誰に相談すればいいのか分からなかった」と涙したといい、女性は今も入院中だ。  高齢者が伴侶を亡くしたショックやうつ、認知症などで生活意欲や判断力が低下し、不衛生な環境に置かれ健康状態に影響が出ているにもかかわらず、他者に援助を求めず放置されているような状態はセルフネグレクトと呼ばれる。ニッセイ基礎研究所が2011年3月に公表した調査では、1年間で孤立死を把握した高齢者765人のうち609人、79.6%にセルフネグレクトの疑いがあった。

引用:毎日新聞(2017年2月17日

驚くような出来事ですが、このセルフネグレクトは、実は今や、高齢者だけの問題ではありません。

弊社では、精神疾患を患いながら、病識がなく治療を拒んでいる方のご家族からのご相談を数多く受けています。対象となる方の年齢は、30代~40代が中心です。壮年期といえる年代の彼らですが、未治療(あるいは受療中断)のまま長い年月が経つほど、入浴や部屋の片付けなど、身の回りの保清ができなくなったり、食事をとれなくなったりするケースが、少なくありません。

これは、長期ひきこもりの方にも言えることです。ご本人がかろうじて食事や入浴はできていても、部屋の掃除や換気を一切しないために、不健康であることに変わりはありません。弊社が介入したあとで自室に入ってみると、部屋中に埃が舞い、布団は垢で真っ黒に変色、万年床のため、床まで腐っていた……というケースもありました。昼夜逆転、暴飲暴食の生活を送り、心だけでなく身体を壊している方もいます。

毎日新聞の記事では、医師が以下のように話をしています。

高齢者医療に詳しい千葉県の川越正平医師は「今回の女性は特殊な事例ではなく、例えば団地の3階に1人暮らしの高齢者が膝を痛めて外出もままならないと、ごみを捨てることも容易ではない。『お上のお世話になるのは申し訳ない』などの意識から、助けを求める力に欠けている人も少なくない」と指摘する。その上で「娘さんも困っていたのではないか。依頼がなくても専門職が訪問支援に出掛けていくことが肝要だ。それが結果的に社会的コストを減らす」と話している。

引用:毎日新聞(2017年2月17日

「依頼がなくても専門職が訪問に出掛けていくことが肝要」。精神保健の分野では、自宅訪問には「本人の意思や同意」が必要となるなど、ハードルはより高くなりますが、セルフネグレクトを防ぐための対応策としては、同様のことが言えるのではないでしょうか。

なお、弊社が携わった、セルフネグレクトのケースについては、3月1日発売予定の、押川の新刊子供の死を祈る親たち (新潮文庫)でも触れています。興味のある方は、ぜひお読みください。