「息子(娘)が何年もひきこもっているんです」
「長くひきこもりを続けているきょうだいがいます」

弊社は、精神疾患に関するご相談を主として受けていますが、10年ほど前からでしょうか。問い合わせの際に、開口一番、「ひきこもり」というワードを使うご家族が、多数を占めるようになりました。

そしてご相談の内容も、「家族ではもう面倒をみきれない」「経済的に支えるのが難しくなってきた」「どうしたら就労して自立してくれるのか」といったものが多く見受けられます。

しかし、10年~20年以上もひきこもっているケースのご相談では、ご本人の状況を詳しく時系列で聞いていくと、「精神疾患の疑いがあるのではないか?」と思われることが大半です。つまり、自立や就労云々を考える前に「医療につなげること」を考える必要があります。

3/7のダイヤモンド・オンラインに、岩手県洋野町の独自調査に関する記事が掲載されています。同町の「ひきこもり該当者」=「社会参加(就労、家庭外での交遊)を回避し、原則的には6カ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態の者(他者と関わらない形での外出をしている場合も含む)」を調査した結果、該当者71人を把握。このうち6割強が40歳以上だったそうです。

この記事では、以下のような調査結果も報告されています。

戸別訪問の結果、2017年1月時点で71人のうち「社会的ひきこもり」状態にある人が45人(男性37人、女性8人)。統合失調症、そううつ、アルコール依存症などの精神疾患を持つケースが10人、身体的疾患を持つケースが7人、その他のケースが9人だった。

引用:ダイヤモンド・オンライン2017/03/07

「ひきこもり」として支援が行き届いていない方の中に、精神疾患や身体疾患をもつ方が少なくない数含まれることは、以前よりよく知られた事実です。

ところが当事者である家族は、漠然と「ひきこもり」と捉えてしまい、「何かおかしい」と思いながらも、見極めができていません。家族が精神疾患の観点をもてるか、そして現実に即した行動をとれるかは、非常に重要な岐路となります

今でこそ「ひきこもり」に関する相談窓口は増え、自宅訪問なども行われるようになりつつありますが、基本的に40歳以上は対象外とされており、なおかつ、支援には本人の意思が最大に尊重されます。

よって、本人が訪問を拒めば先には進みませんし、それ以前に家族が、「自宅訪問など、本人が怒るに違いない」と気後れしてしまいがちです。公的機関の専門家から、「本人の意思を尊重し、時間をかけて見守ってあげてください」とアドバイスをされることもあります。

しかしこれが精神疾患となると、「時間をかけて見守る」ことは、未治療の時間がひたすら経過していくにすぎず、症状を重篤化・固定化させてしまうことになります。それを避けるためには、早期の治療こそが重要であり、家族主導で専門の医療機関につなげるべきケースもあるのです。

つい先日の相談でも、こんなお話を聞きました。

相談者である家族は、家庭内にひきこもる子供について、これまでにほうぼうの行政機関に相談に行っています。家庭内暴力があったため、行政機関の専門家からは別居を勧められ、家族は言われたとおりに自宅から出て、本人を見守っていました。しかし結果として、本人の状態は重篤化、いよいよ強く介入を申し入れたところ、措置入院となったと言います。

その際、入院先の医療機関から、「なぜここまで放置したのか」と、親の責任を問うような発言があったそうです。家族は、「何度、保健所に相談に行っても家庭訪問さえしてもらえず、自宅を出て様子をみるようにと言ったのは誰だと思っているのか!」と、憤っていました。

弊社への相談事例を振り返ってみると、「社会的ひきこもり」という概念は非常に曖昧であり、この言葉にまどわされた家族が、子供の精神疾患をみすみす放置してしまった事例は相当数にのぼるのではないかと考えています。そして、家族では説得ができない、精神疾患の(あるいはその疑いのある)対象者を、どのようにして早期に医療につなげるか。この部分こそが、大きなハードルとなっていることが分かります。

「うちの子供(きょうだい)はひきこもりだから……」と、漫然と受け止めてきたご家族の方には、今一度、本人の状況をよく知り、問題の本質を見極めてほしいと思います。そこで次回は、「ひきこもり」状態にある子供(きょうだい)の精神疾患について、よくあるケースと見極め方について、弊社の経験から分かりうることを述べたいと思います。