大阪府枚方市の自宅で平成28年、長男=当時(42)=を殺害したとして、殺人罪に問われた父親の八木昭彦被告(74)に対する裁判員裁判の判決公判が24日、大阪地裁で開かれた。西野吾一裁判長は「経緯や動機に同情できる余地がある」として懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役6年)を言い渡した。

西野裁判長は、神経症を患っていた長男が、両手足が不自由で寝たきりの八木被告の妻に対し、親族に金の無心をするよう複数回にわたって要求し、暴行を加えていたと指摘。妻から長男の殺害を繰り返し依頼され、「精神的に追い詰められた末の犯行だ」と結論づけた。

判決によると八木被告は妻と共謀し28年8月20日、自宅で長男の首をタオルで絞めて窒息死させた。被告は22日に府警に自首した。

引用:産経新聞2017/03/24

押川の著書やブログでは、家族間の殺傷事件について、たびたび取りあげてきました。高齢の身で、障害をもつ子供を支えることの苦労は、察してあまりあります。

しかしながら、親族間の殺傷事件のデータが増え、こういった温情判決が下されるのを耳にする機会も多くなると、「子供が助かる余地は、本当になかったのだろうか」と思えてなりません。障害をもつ子供を親が殺し、裁判では同情さえされる……、果たしてこれが、障害をもつ方々にとって本当にやさしい社会と言えるでしょうか。

親が子供を「殺すしかない」と思い詰めるほどの事態に陥っているのに、第三者の介入がなかったのはなぜか。子供は入院治療が必要な状態だったのではないか。医療や福祉の手を借り、親と子が距離をもって生活するという選択肢をもてなかった原因はどこにあるのか。

その本質にメスをいれない限り、このような問題はいつまでもなくなりません。

日本の精神保健福祉分野は、精神疾患が疑われる10~20年以上のひきこもり事例が医療につながれぬまま重篤化している問題など、医療に結びつけることが難しい事例へのアプローチについて、解決策が見いだせぬまま現在に至ります。

条文はあっても執行されていない制度もあり、病態失認の患者さんをどう医療につなげるかについては、公の議論さえ行われぬまま、地域移行が推進されています。

この、日本における地域移行の現状について、弊社の押川は、いつもこう申しております。

「地域移行とは、地域住民、市民の一人ひとりがソーシャルワーカーになるということだ」

長期のひきこもりや病態失認など、対応の難しい事例ほど家庭や地域に放置されている現実がある以上、私たち一人ひとりが、そのような限界を迎えている家族の存在に気づき、「何ができるか」を考えて対応するという役割を担わされているのです。

だからこそ弊社では、広く市民の方々に、まずはこういった問題があることを知っていただき、関心をもっていただくことが急務だと考えています。

押川の著書では、家族の実態から精神保健福祉分野の制度、仕組みまで言及しています。興味のある方はぜひ、お読みください。(なお、『「子供を殺してください」という親たち」がいわば入門編、「子供の死を祈る親たち」が総論となっております)