押川の著書やブログには、親やきょうだいに暴力を振るったり暴言を吐いたり、金銭の無心など精神的拘束をする子供たちの事例が数多く登場します。全面的に子供の肩をもつわけではありませんが、生育歴や親子関係を詳細に振り返っていくと、「親にも問題があった」と思われるケースは、あとを絶ちません。

昨今の家族間事件の報道等を見ていて、弊社が非常に危惧しているのが、親の「狂気」です。昨年の8月には、愛知県名古屋市で、小学校6年生の息子を父親が刺殺する事件がありました。理由は「中学受験の勉強をしないので、息子と口論になった」というものでした。

そして、今年の2月、三重県四日市市で起きた高校3年生(当時)の長男が母親を刺殺した事件では、「母親が先にペティナイフを持ち出し、首を絞めてきた」ことが明らかにされ、長男への保護処分が決定しています。

母刺殺の19歳長男を保護処分 先にナイフ持ち出した母への過剰防衛を認定 津家裁支部

津家裁四日市支部は3日、三重県四日市市の自宅で母親=当時(47)=を刺殺し物置に遺体を隠したとして、殺人と死体遺棄の疑いで家裁送致された長男(19)を、初等・中等(第1種)少年院送致とする保護処分を決定した。

後藤真知子裁判長は決定理由で、大学受験の結果について怒りだした母親が、先にペティナイフを持ち出して首を絞めてきたことから、長男は身の危険を感じて刺したと認定。母親の首をいきなり絞めてから刺したとする検察側の主張を退けた上で、過剰防衛だと判断した。

母親の行為に誘発されたことなどから刑事処分以外の措置が相当とし、少年院において矯正教育を施して、十分な時間をかけて処遇を受けさせる必要があるとした。

決定によると2月14日、自宅で母親の首をナイフで7回刺し、ダンベルで頭部を複数回殴り、首をタオルで絞めて殺害し、物置に遺体を遺棄した。

引用:産経新聞 2017/04/03

また、先月には、このような事件も起きています。

16歳息子に包丁突きつけ「刺すぞ」 神戸新聞整理部次長を現行犯逮捕

息子に包丁を突きつけて脅したとして、兵庫県警神戸西署は28日、暴力行為法違反容疑で、神戸市西区竹の台、神戸新聞社編集局整理部次長(51)を現行犯逮捕した。「包丁は向けたが、脅していない」と容疑を一部否認している。

逮捕容疑は28日午後9時50分ごろ、自宅で高校1年の息子(16)に包丁を突きつけて「刺すぞ」と脅したとしている。

同署によると、息子が「父親に包丁を向けられた」と110番した。高校の授業料などをめぐり、口論になっていたという。

同社は「社員が逮捕されたことは大変遺憾。事実かどうか確認した上で、事実とすれば厳正に対処する」とコメントした。

引用:産経新聞 2017/3/29

本件がそうだと決めつけるわけではありませんが、親のほうが家庭内で凶器を持ち出す(しかも子供に向かって)という行為は、「実は事件時が初めてではなかった」という場合が多いように思います。つまり過去にも、親子間の口論の際に、親が子どもに刃物を向けたり、暴力や器物破損といった行動をとっており、社会からみれば、110番通報するに匹敵するような方法で、感情の表出をしているのです。

そして親の言動がここまでに至るには、子供のこと以外にも、たとえば夫婦仲や仕事のこと、人間関係のことなどで、日頃からストレスや鬱憤、尋常ではない怒り等があるのではないかと推測されます。普段から家庭内に、親の「狂気」が満ちているということでもあります。

弊社への相談事例として、この段階(親が子供に狂気を向けていた段階)では事件にならず、そのまま推移し、子供が大学受験の失敗を機にひきこもりはじめて以降、今度は子供が親に刃物を振り回すようになった、という相談もありました。親の「暴力はいけない」というお説教がむなしく響くことは当然で、親は子供を置いて家から逃げるしかありませんでした。

ただでさえ殺伐とした社会、不安に満ちた世の中で、家庭内にまで「狂気」がみなぎっていては、子供の心が休まることもありません。親自身が、ストレスや鬱憤を「狂気」にまで昇華させないために、どのような生き方をすべきなのか。他人事とは思わずに、今一度、考えてみる必要がありそうです。