タリウム事件、高齢女性の殺害事件を起こし、一審(名古屋地裁)で無期懲役判決を受けた元名大生ですが、弁護側は裁判員裁判判決を不服として、6日までに名古屋高裁に控訴しました。

この事件に類似するところがあり、思い出されるのは、2014年7月に長崎県で起きた、佐世保女子高生殺害事件です。加害者の少女は、小学生の頃に給食に異物を混入するなどし、中学時代に母親や祖母を亡くしてからは猫の解体をおこない、父親に対する暴力もあったといいます。

どちらも未成年者による事件であり、人命を奪ったという点では同じですが、佐世保事件の加害少女は、2015年7月、長崎家裁により医療少年院(第3種少年院)送致とする保護処分の決定がなされています。平井健一郎裁判長は「ASD(自閉症スペクトラム障害)が見られるものの、それが非行に直結したわけではなく、環境的要因の影響もあった」との趣旨のことを述べています。

なお、2001年に改正された少年法では、16歳以上による殺人は検察官送致(逆送)が原則とされていますが、長崎家裁は、加害少女に対しては刑罰による抑止は効果がなく、治療教育での処遇が望ましいとして、加害少女を刑事裁判へかける検察官送致ではなく、医療少年院送致の保護処分と決定しました。

しかしながら、家裁の判断については、専門家の間でも物議を醸すものでした。

長崎地検は加害少女の精神鑑定後、「(少女には)責任能力があり、刑事処分が相当」との意見を付けて家裁に送致しています。家裁も4か月かけて精神鑑定を行ったうえで医療少年院送致を決めていますが、収容期間は最長26歳未満とされており、効果の面で疑問を投げ掛ける専門家もいます。

被害少女の父親は、審判結果を受けて、「期待していた結論ではない。受け入れられない」とコメントしています。被害者遺族の代理人弁護士によると、父親は座ったまま号泣し、「治療が必要だとしても、罪を償ってほしい」と代理人に訴えたといいます。

少年審判は、原則非公開です。2008年12月20日から、被害者や遺族などが、「少年審判の傍聴」や「審判状況の説明を受けること」を申請できるようになりましたが、それでも遺族が知りうる情報は少ないと聞きます。

報道で知りうる限りでも、さまざまな問題を提起するものでした。

しかし加害少女は、いきなり事件を起こしているのではなく、予兆ともいえる自傷他害行為(恐れも含む)を行っていたわけですから、将来のある未成年に対してこそ、危機介入に特化した対応ができるよう徹底的に検証・改善すべきです。それこそが類似の事件発生防止となり、加害者も被害者をも救うことにつながります。

ちなみに4月1日の長崎新聞によると、長崎県内では近年、少年が加害者の凶悪事件が続発しており、精神科を受診する子供も増加していることから、対応できる医師の育成に力を入れているとのことです。

子どもの心のサポート医認定

子どもの心の問題に向き合ってらおうと、長崎大学病院と県は、県内の精神科医15人を「子どもの心のサポート医」に認定した。31日、長崎市坂本1丁目の同病院で初めての認定式があり、出席した3人に認定証が手渡された。  県内では近年、少年が加害者の凶悪事件が続発。大学病院によると、精神科を受診する子どもが増加しているが、対応できる医師が不足している。  大学病院の「地域連携児童思春期精神医学診療部」は県の助成を受け、昨年4月から毎月1回、基礎講座を実施。延べ463人(1回平均39人)の精神科医が受講し、発達障害や不登校などについて理解を深めた。このうち出席数を満たし、リポートを提出した医師をサポート医に認定した。  認定式に出席した日見中央病院(長崎市芒塚町)の吉田秀夫医師(66)は「県内で大きな事件があり、なぜ子どもが事件を起こすのか分からなかったが、勉強して少し理解できた。今後の診断や治療に生かしていきたい」と話した。  大学病院と県は今後も講座を継続し、サポート医を増やす意向。希望する医師の情報はホームページで公開し、受診などに役立ててもらう。

長崎新聞 2017/04/01

長崎県内では、佐世保女子高生殺害事件より以前にも、少年による重大事件が相次いでおり、同じ轍を踏んではならないという意識のあらわれかと思われます。

子供が未成年のうちは、精神疾患の診断名がつけられたり、投薬がなされたりすることに対しては、慎重さがあってしかるべきですが、心のケア、サポートという意味では、精神科医療が発揮できる力は大きいはずです。

対象が未成年であるからこそ早期介入は有効で、その場合の責任を精神科医や医療従事者のみに負わせるのではなく、行政や児童相談所、少年サポートセンター等との連携など、いざというときには地域全体で子供を守れるような体制づくりが、全国各地で進められてほしいと思います。