大分県宇佐市四日市の認定こども園「四日市こども園」で、サバイバルナイフを持った男が男児らを襲った事件ですが、その後の調べにより、事件の2、3年前に、銃刀法違反容疑で逮捕された射場健太容疑者(32)が、同園の副園長(41)の男性に悩み事を相談していたことが分かったそうです。

 副園長によると、2、3年前、射場容疑者宅近くの自販機でジュースを買って話をしていた女子中学生数人が、射場容疑者に「うるさい」と言われ携帯電話で写真を撮られたとして、近くのこども園に駆け込んで来た。副園長と中学校職員が射場容疑者宅を訪ね写真消去を求めた。

間もなく射場容疑者が園を訪れ、副園長に30分ほど相談をした。自分がいじめられていたことや親への不満を述べ「もう30歳に近く、周りは結婚しているのに、自分は社会に出られず情けない」といった趣旨の話をしていた。副園長は「無理に出る必要はない。家で自分らしくできる仕事もある」などとアドバイスをした。その後も一度園を訪ねて来たが副園長は不在だった。

引用:毎日新聞 2017/4/8

このような記事を読むと、容疑者自身がSOSを発し、救いを求めていた事が分かります。容疑者が悩みを相談した副園長の年齢(41歳)をみても、自分と年の近しい、家族以外の誰かとつながりたいという思いが強かったのではないかと推測されます。

ひきこもりを続ける方への支援について、専門家の中には「本人の意思を尊重し、自分から出てくることを待つべきだ」「いきなり第三者が介入することは好ましくなく、家族が説得をすべきだ」という意見もあります。

しかしこの事件では、家族は保健所に相談に訪れ、精神科医とも面談をおこなっていました。その後、両親が本人に何度か受診の説得をしたものの、「絶対に治らない」と受診を拒否したと言います。

このように、家族が(対象者に)医療が必要だと認識していても、病状が悪化していくほど家族では説得が難しいことも事実です。

とくに長期にわたるひきこもりのケースでは、家族関係が崩壊している場合がほとんどです。本人が親の育て方や自分への接し方に強い不満を抱き、「ひきこもりになったのは親のせいだ」という恨みをもっていることもしばしばです。

押川の著書「子供の死を祈る親たち」第一章(ドキュメント)「ケース1」のモデルとなった人物は、まさにそのタイプでした。親は何度も精神科での治療を勧めていますが、彼は頑なに拒否。15年が経過し、生命に危険が及ぶ段階になって親が相談に来られ、弊社の介入により、医療につながることができました。

押川による説得の際、本人は抵抗することもなく、素直に入院治療に応じました。あとから分かったことですが、彼は自分が病気(強迫性障害)であることを認識していました。それでいて、親から治療を勧められたときにそれを拒否したのは、「親の言うとおりにはしたくない」という頑なな思いからだったと言います。

もちろん、素直に入院治療に応じたからと言って、その後の経過がスムースだったわけではありません。すったもんだはありましたが退院し、今では、親とは距離をもって生活しています。グループホーム職員の方々や弊社スタッフとの対話を繰り返しながら、現在に至ります。

大分の事件で、我々一般市民が認識しなければならないことは、ある一定数ではあるけれども、放置すれば事件を起こしかねない、危機介入の必要な精神疾患の患者(疑いを含む)がいることであり、家族では対応できていない現実があるということです。

厚労省は今のところ、そういった最重要の問題については具体的な解決策を提示することなく、地域移行を進めています。訪問支援を行っている行政職員をはじめ、関連従事者の方々こそ、危機介入時の対応、コミュニケーション能力のスキルアップ等、技能を身に付けるべき時期にきているのではないでしょうか。押川も著書で提言しているように、今こそ積極的な「おせっかい」の仕組みが求められています。