弊社ではご家族からの相談を主に受けていますが、「親一人、子一人」というような家庭を除いては、本人の周りに父親、母親、きょうだいなど、複数の家族がいることになります。そこで必ずお聞きするのが、「家族の意見は一致していますか?」ということです。

実は、弊社にご相談がある時点で、「夫婦の間で意見がバラバラ」、「他の子供たち(本人のきょうだい)には何も話していない」といったこともよく聞かれます。またごきょうだいからの相談でも「親と深くは話し合っていない」「親が悩んでいて、どうにかしたいと思っているのは間違いないが、実際の所どうするつもりなのか分からない」という方が少なくありません。

家族の誰かが相談に来られた場合、相談を受ける側としては「旦那様(奥様)はどうお考えですか」「ご両親はなんとおっしゃっていますか」ということを、必ずお尋ねします。

というのも、家族での見解がある程度一致していないと、せっかく面談をしたり業務をおこなったりしても、途中で家族の誰かが「もう少し様子をみたらどうか」「入院させるのはかわいそうだ」「反対だ」「協力したくない」などと言い出し、中断せざるをえなくなる場合があるからです。相談を受ける側としてはそれが分かっているので、あらかじめ意見が一致しているかお尋ねしますし、「まだ話し合っていない」という家族には、「まずはよく話し合ってみてください」とお伝えすることになります。

そうは言っても、家族にはそれぞれ考え方、立場、本人との関係性もありますから、この「意見を一致させる」ことが大きなハードルでもあります。そこで最低限、家族できちんと話し合い、共通認識をもつべきところを、以下に挙げてみたいと思います。

①家族それぞれの立場(役割)を認識する

世間一般には、「家族」と言うと、血のつながった者同士なんでも語り合えるというイメージがありますが、問題を抱える家庭では、なかなか本音を言い合えないという環境にあります。しかし、問題解決をしていくに当たっては、やはり家族で腹を割ったところでの「具体的」な話し合いが求められます。

弊社が見てきた限りではありますが、対象者以外の家族の立場(役割)は、だいたい以下の3つのパターンに分かれます。

・キーパーソンになりうる方(具体的な解決を求めており、そのために動ける人)

・傍観者(解決してほしいと思っているが、自分は関わりたくない人)

・具体的解決の妨げになる方(対象者と共依存の関係にあるなど)

この中で、現実的に動けるのは「キーパーソン」だけです。「傍観者」「具体的解決の妨げになる方」には、その旨を理解してもらい、本人を助けるためにも、「キーパーソン」にすべての権限を委ねることを約束してもらいます。

弊社のような民間企業には依頼せず、ご家族で対応する場合にも、誰がキーパーソンとなって動けるのか、その見極めは重要です。そしてそれ以外の家族の方は、いったんキーパーソンに権限を委ねた以上、問題解決の過程においては、キーパーソンと考え方や手段において一致しないことがあっても、文句を言ったり責めたりせず、後方支援にまわることです。

②本人の現状に対する見解の一致

キーパーソンが決まったら、その人を軸に、本人の現状について、家族がどのような認識をもっているのか確認してください。

精神科未受診の場合、最終的に精神疾患であるかどうかの診断(またその診断名)は精神科医がおこなうものですが、最近は、インターネットや書物でも症状を調べられ、ある程度類推できるようになっています。【本人の現状が、家族からみるとどのように思われるのか】という点については、家族間で認識をともにしておきましょう

また、過去に受診歴があり受療中断しているような場合でも、最後の診察から年月が経っていれば、本人の病状も変わっているはずです。何がどのように変化したのか、家族で情報交換をし、変化の過程をまとめておきます。

よくあるのは、きょうだいからみれば「病気ではないか」と思えるところが多々あるのに、親が認めない、というケースです。とくにありがちなのは、長期ひきこもりをイコール「無職」「怠け者」と決めつけ、「働け」と文句を言ってしまうこと(父親に多い)や、精神疾患への偏見や差別があり、子供が病気であるという事実をなかなか受け入れられないこと(こちらは母親に多い)があります。

この場合きょうだいにできることとして、インターネットや書物からエビデンス(根拠となるもの)を抜き出し、「こういう症状がある以上、精神疾患の疑いがあるのではないか」と親に見せるなどし、理解してもらう努力を惜しまないことです。特に、きょうだいが両親や本人とは同居していない場合はなおさら、意見を述べる際の話し方には十分気を付けてください。子どもからの指摘を素直に受け止める親御さんはそうおりませんし、「同居もしていないのに何がわかるのか」といった気持ちになってしまえば建設的な話もできません。

本人と同居している親の場合、心労から客観性を失っており、健全な判断ができない場合が多いものです。親の性格や物事の捉え方などを理解した上で、説明することが必要になります。

③先々のことを話し合う

本人の現状に対する家族の見解が一致すれば、そこから、どのような支援が必要なのかが、多少なりとも見えてくるはずです。必要な支援が明確になれば、あとはその支援をしてくれる機関(行政あるいは民間)を探します。

なお行政機関を利用する場合、「相談のコツ①~問題点を整理し、優先順位をつける」でも記したように、丸投げして一気に解決してくれることは、まずありません。だからこそ、家族が何に困っていて、取り急ぎどのような支援を欲しているのかを明確にしておくことです。

※行政機関などへ相談される際のポイントは、弊社ホームページでも詳しく記載しております。

また、きょうだいがキーパーソンとなる場合には、本人のために親が遣える資産の有無など経済状況も確認しておくべきです。お金の話は親子間でもしづらいものですが、両親に万が一のことがあってからでは遅いこともあります。また、ご本人に資産等がある場合には、病状の重さによっては、成年後見制度の利用を検討するなど資産管理をしていく必要もあります。

精神疾患に関しては、家族であっても、本人に「心の病気だから病院に行こう」とはなかなか言えず、ずるずると時間が経ってしまうことが多くみられます。しかしそれを言わなければ始まらない事態があるのと同様、家族の問題を解決する近道とはすなわち、【家族間でもっとも話したくないことを、腹を割って話し合う】、【これまで避けてきた話題に、家族で向き合う】ということではないでしょうか。そして逆説的にみれば、日頃よりそのような会話ができている家庭では、家族の問題が起こりにくいとも言えます。