16日午後8時20分ごろ、滋賀県長浜市小堀町の大型量販店1階で、同市の女児(7)と母親(41)が女に刃物で切りつけられた。近くにいた男性店員らが女を取り押さえ、滋賀県警長浜署が殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。同署によると、同市宮司町の職業不詳の女(43)で、突然女児を切りつけ、かばおうとした母親も切りつけた。女児は顔や右腕、母親は右肩や右足にけがをした。女は精神疾患で通院歴があるという。
引用:産経新聞 2017/4/17

16日に滋賀県長浜市で起きた刺傷事件ですが、当初は命に別状がなくて良かったと思い見ておりましたが、後の報道によりますと、女児は「頬やひじを切られた上、肝臓を損傷する重傷」、母親は「足の付け根部分を刺され、盲腸を損傷するなどの大けが」を負ったとのことです。

一歩間違えば命を落としていたかもしれず、また、被害に遭われた方の恐怖を思うと、今後の心身のケアと、順調な回復を願ってやみません。

なお、この事件の容疑者の女性は、「精神疾患で通院歴がある」と報道されています。近年は昔に比べ、容疑者の精神疾患の有無が報道されることも珍しくありません。しかし、このように第一報で「精神疾患で通院歴がある」というニュースが流れ、それで済まされてしまう報道のあり方には、疑問を抱きます。実際にこのような報道がなされると、インターネット上には「精神障害者は危険だから、閉じ込めておけ」という短絡的な意見が飛び交い、哀しく思うこともあります。

「精神疾患」とひと言で言っても、いろいろな診断名があり、病状もさまざまです。自傷他害の恐れのある重篤な症状の方もいれば、通院や服薬により病状の安定を維持して社会生活を送っておられる方もいます。また、状況によっては、医療や福祉につながりにくいケースもあります。

たとえば、医療や福祉につながりにくいケースの一例として、ストーカー行為が伴う精神疾患が挙げられます。
第三者がみたときには加害者に明らかな精神疾患(被害妄想や異常な執着等)がみられる場合でも、それが「ストーカー事案」となると、保健所が対応することは皆無に等しく、「警察に相談してください」と言われてしまいます。
さらに今では、「ストーカー事案」に関しては、警察庁が主体となって加害者への治療にも取り組んでおり、省庁全体でみたときにも、管轄はすでに厚労省ではなく警察庁となっているのが現実です。

これは、男女間のストーカーに限ったことではありません。
たとえば弊社が過去に携わった事例として、「近隣住民から、繰り返し嫌がらせを受けて困っている」という相談がありました。その方は、近隣住民から何度か文書を受け取っており、それを読む限り、近隣住民の方は被害妄想を呈している状態と思われました。

そこで弊社としては、まずは保健所の保健師にその近隣の方を訪問していただき、必要に応じて医療につないでもらうべきだと考え、相談者とともに保健所を訪れました。しかし保健所では、近隣住民による嫌がらせ行為のほうに重きをおかれ、「これは警察に相談すべきだ」と言われてしまったのです。

「ストーカー」や「嫌がらせ」等、ともすれば刑法に抵触する行為が付随しているケースでは、明らかに精神疾患が疑われる状況にあっても、医療や福祉につなげることは容易なことではありません。

こういった事例もあることから、事件化して報道されたときに「精神疾患である」という一文があっても、そこから背景含め事実を読み取ることは、とても難しいものです。

これは「(精神科に)通院歴がある」という表現にも同様に言えることで、現在も通院中であるにもかかわらず、このような事態に陥ってしまったのか。それとも、通院歴は過去のことで、受療中断(服薬や通院が途絶えてしまうこと)による事件だったのか。あるいは、入退院を繰り返しているような重い症状の方だったのか……。それらを深く鑑みないことには、なぜこのような事件が起きてしまったのか、正確に理解することはできません。

もちろん、個人情報保護の問題もありますし、捜査や精神鑑定を経なければ分からない事実もあります。しかし未遂で終わった事件に関しては、後追い報道がなされることも、ほとんどありません。

「地域移行」「共生」がうたわれ、厚労省が予算を組み精神障害者地域移行・地域定着支援事業を推し進めている以上、精神疾患を患う方の起こした事件報道についても、「精神疾患で通院歴がある」と十把一絡げにして終わりにするのではなく、その背景にあるものも含めた取材、報道がなされてほしいと思います。

今後、同様の事件を防ぐためには、そこに至るまでの事実を正確に知り、どのような支援が必要だったのか考え、議論することです。既存の制度は機能しているのか? 精神保健福祉法は執行されているのか? といった建設的な議論がおこなわれ、広く一般市民に周知されることこそ、精神障害者への無用な偏見・差別を防ぐことにつながるはずです。