月刊コミック@バンチ6月号が発売されました。

『「子供を殺してください」という親たち』の連載第三回目は、アルコール依存症をテーマとした【ケース2】の後編……、押川が、問題の背景にある家族の秘密に迫ります。是非お手にとってお読みください。

 

さて、アルコール依存症ですが、文學界4月号に掲載されていた、第47回九州芸術祭文学賞最優秀作「酒のかなたへ」(尾形牛馬著)は、アルコール依存症だった著書自身の経験に基づく物語だそうです。

主人公は、アルコールの飲み過ぎで妻に連れられ、X精神科病院を訪れます。そこで、七十代の精神科医(アルコール依存症治療の世界では五本の指に入るとも言われる高名なベテラン医者)と出会います。

アルコール依存症であることを認めず、入院を拒む主人公。

妻は医師に「どうしてこんな病気になるとでしょうか?」と尋ねます。それに対して医師はこう答えます。

持って生まれた体質と乳幼児期から形成されてきた性格だよ。

(中略)

飲み始めたら止まらん体質とありのままで生きていく能力が欠如している性格が原因だよ。アルコール依存症者はいつも自分を大物に見せようとするからいつも酒に酔っていなくてはならないんだ。

引用:「酒のかなたへ」尾形牛馬

さらに「この病気は治るとですか?」と尋ねる妻。医師は言います。

治る者もいるんだ。入院して依存症のことをみっちり勉強して自分自身の心をしっかりと見つめれば、治る場合もある。ただ治ると言っても依存症そのものが治るとじゃなかぞ。最初の一杯の酒に手を出さない生活が送れるようになるのをこの世界では治ると言うんだよ。

引用:「酒のかなたへ」尾形牛馬

小説ですので当然創作ではありますし、著者の年齢から時代背景はやや古いかもしれません。しかしながら、この精神科医の言葉は、アルコール依存症の本質をあらわしているように思います。

なおこの小説では、酒を飲むまいと決意する主人公の前に、入院中に知りあった仲間が尋ねてきて、「自分は酒をやめない」と宣言、主人公にも酒を勧めます。

終盤、酒が酒の存在を越え、人間性や生き方までをも揺るがし主人公を懊悩させる下りは、著者の実感が伴っていて、引き込まれるものがあります。