少し前の記事になりますが、読売新聞に、ひきこもりの人を対象とした訪問支援の難しさを感じさせる記事が掲載されていました。

ひきこもりの人の相談・支援のため、全国68か所に設けられている「ひきこもり地域支援センター」が2015年度、相談を受けた家庭のうち、訪問支援を実施できたのは9%にとどまったことが読売新聞の調査でわかった。

引用:読売新聞 2017/04/17(朝刊)

この理由として、記事では「拠点やスタッフの不足」を挙げ、専門家の育成がカギだと述べています。

センター事業の予算は原則2000万円が上限で、国が半分を負担。これで確保できるスタッフは4人程度にとどまり、多数の親らの相談に応じつつ合間に訪問を行うしかない。センターによっては他機関の職員が兼務したり、自治体が独自に予算をつけたりして、職員数も専門職の配置状況もバラバラだ。

引用:読売新聞 2017/04/17(朝刊)

なお、ひきこもる人々については、国も正確な数字を把握できていないのが現状ではないかと思います。昨年には、内閣府が【15~39歳のひきこもりの人は、全国で推計54万一千人にのぼり、期間は「7年以上」が35%ともっとも多い】という調査結果を発表しましたが、40歳以上が調査対象に含まれていないということで、批判の声が上がりました。

読売新聞の記事では、数字について以下の記載があります。

「KHJ全国ひきこもり連合会」の今年の調査では、40歳以上が25%を占め、10年前に比べて平均年齢は9歳高い33.5歳。ひきこもりの平均期間も2.5年長い10.8年に達した。

引用:読売新聞 2017/04/17(朝刊)

弊社の経験では、相談に来た家族が「子供がひきこもっていることを、誰にも相談したことがない」と話すことも少なくありませんでした。それを踏まえると、数字はより膨らむ可能性もあります。

現時点では残念ながら、当事者と社会とのつなぎ目である訪問支援さえ、満足に行われているとは言えない状況にあります。ここまで支援が難しくなっている要因には、拠点や専門家の数の少なさに加え、「ひきこもり」の裾野があまりにも広くなってしまったことが挙げられるのではないでしょうか。

最近では、「ニート」という言葉もあまり聞かれなくなり、一定期間、社会参加(就学や就労)をしていない人については、深く考えずに「ひきこもり」とひとくくりにする傾向があります。また近頃では、夫や家族以外の外部との関わりが途絶えてしまった主婦などの中にも、「ひきこもり」状態にある方がいる、との指摘もなされています。

陰に隠れがちなところにまで支援を届かせることは大切ですが、ここまで定義が広くなり、それぞれに合わせたきめ細やかな支援が求められることを思うと、国や自治体がどこまでそれを背負えるのか、甚だ疑問でもあります。

少し古い記事になりますが、支援をする方々の中には、「社会的ひきこもり」が対象を曖昧にしているのではないかと指摘する方もいます。参考:「社会的ひきこもり」はいらない

なお、現時点で厚労省が掲げているひきこもりの定義は、以下のようになっています。

・「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念」と定義(概ね従来通り)。

・なお、「ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが,実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべき」としている。

引用:ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン

ここにも記載されているように、「家族が『長期にわたるひきこもり』として相談にくる事例の大半に精神疾患がある」と指摘する精神科医もいます。これは、弊社が日頃、家族からの相談や依頼を受けていても感じることです。

とくに「長期にわたるひきこもり」の子供を抱えている家族の方々には、漠然とひきこもりの支援を求めるだけでなく、「精神疾患の可能性」という視点も持つべきではないかと思います。精神疾患(あるいはその疑い)があるのであれば、相談先も支援へのつなげ方も変わってくるからです。

このことについて詳しくは、「本当に「ひきこもり」ですか?①」「」に記述しております。

また、押川の著書「子供の死を祈る親たち」では、長期にわたるひきこもりを続け、家を一軒占拠し「たてこもり」状態に陥ってしまった子供、親を奴隷化する子供など、数々の事例を提示しています。こちらも併せてお読みください。