毎日新聞経済プレミアの記事ですが、押川の過去のインタビュー記事も、アクセスランキング入りしておりました。

なお、コミックバンチwebでは、「『子供を殺してください』という親たち」の電子版を読むことができます。

こちらも併せてお読みください。

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訪問看護において看護師が受ける暴力等について、産経新聞に「【関西の議論】「ぶっさいくやのー」暴言にセクハラ、性的被害…つらすぎる訪問看護師「暴力を受けた経験5割」の衝撃」とする記事が掲載されていました。

暴言にセクハラ、果ては性的暴行…。1人で患者宅に赴き、看護や介護にあたることが多い訪問看護師が患者や家族から受ける被害が後を絶たない。神戸市看護大が平成27年度に行った調査では、約5割が「暴力を受けた経験がある」と回答した。

引用:産経新聞 2017/04/28

詳細は記事に書かれていますが、暴力の主体は患者だけでなく、患者の家族からのものも少なくないと言います。その内容は、「杖で叩かれる」といった暴力だけでなく、抱きつかれる、体を触られる、「素手で陰部を洗え」と強要されるなどセクハラ被害、「ぶっさいくやのー」と言われたなど暴言もあります。さらには、患者の家族による薬物混入など、刑事事件となりうる事態まで起きているとのことです。

藤田さん(注:神戸市須磨区の訪問看護事業所長で看護師の藤田愛さん)によると、被害に遭った訪問看護師の中には、患者が認知症や精神障害で「病気だから仕方がない」と報告せず、患者や家族からの過大な要求やクレームに対しても「仕事の一部だから」と自分で抱え込んでしまうケースも多い。「暴力を受けているという当事者認識さえ乏しい」と語り、放置して事件になることを懸念する。

実際に平成20〜21年、大阪府内で寝たきりの内妻の介護に訪れた女性ヘルパーに、夫が睡眠剤を混ぜたコーヒーを飲ませて性的暴行を加えた事件が発生。大阪地裁は23年1月、準強姦罪などで懲役16年の実刑判決を言い渡したという事例もある。

患者自身や支える家族もストレスなどから、訪問看護師につらく当たるケースもあるだろう。ただ、暴言やセクハラなどは訪問看護師の心を傷つけ、病気や離職につながりかねず、身体的暴力や性的暴行は犯罪行為で放置はできない。

引用:産経新聞 2017/04/28

これらの事態を受けて兵庫県では、被害を防止するために複数人での訪問を行えるようにしたり、看護師や事業所から相談を受け付ける専門の窓口を設けたりするなど、事業所と訪問看護師の支援に乗り出しているそうです。

精神保健分野でも最近は訪問看護が盛んになっており、他人事とは言えません。また記事の中では、男性の看護師や介護士が増えているとはいえ、まだ圧倒的に女性のほうが多い職種であり、暴力やセクハラの被害に遭いやすいことにも触れられています。これは保健師にも同様に言えることでしょう。

弊社の押川は、著書やブログで、主管行政である保健所に適切に対応してもらえない事例について、たびたび述べていますが、その一方で、とくに他害の恐れのある患者の自宅訪問等に、多くは女性である保健師さんが向かわなければならないという現在の構造にも、問題があると指摘しています。

精神保健に関しては、警察官通報(精神保健福祉法第23条)という制度があるものの、自身が医療従事者の立場であることが足かせとなり、ましてや訪問看護のように患者と人間関係を継続していく必要のある現場では、暴力やハラスメントが起きたとしても、表沙汰にはしにくいものです。

押川は著書「子供の死を祈る親たち (新潮文庫)」の中で、家族の問題に総合的に取り組むスペシャリスト集団の設立を訴えていますが、今回の記事に関する内容として、以下のような記述をしております。

スペシャリスト集団は、公的機関や医療機関、アウトリーチ事業に関わる専門家にとっても、力強い存在になれると思います。たとえば現行の仕組みでは、それらの専門家が、本人や家族から暴力・暴言を伴う行為をされたり、支援を拒否するための脅し、逆恨みなどされたときには、110番通報をするしかありません。しかし警察を呼んだことにより、本人や家族からよけいに恨まれたり、関係が途切れてしまったりする可能性があります。このような場合に、総合窓口であるスペシャリスト集団を呼ぶことができれば、もう少しソフトなかたちでその場を収めることができます。

スペシャリスト集団は、言ってみればおせっかいやときには「悪役」を担う立場です。専門家の矢面に立ち、業務を円滑に進めてもらうためにも、本人とコミュニケーションを継続し、言いにくいことを代わりに言ってあげるのです。

引用:「子供の死を祈る親たち」(押川剛著)

訪問看護なくして地域移行は成り立ちません。意欲をもって職務にあたられている専門職の方々が安心して日々の業務に取り組めるよう、兵庫県以外の自治体にも、早急に対策を講じてほしいと思います。