4月29日、福岡県篠栗町のアパートで、住人の男がライフル銃のような物を持って立てこもるという事件がありました。

 銃?所持の男9時間籠城 福岡・篠栗町のアパート、住民30人避難

29日午前8時前、福岡県篠栗町のアパート1階の一室で、この部屋の住人の男(56)がライフル銃のような物を持って立てこもっているのを粕屋署員が発見した。出てくるよう呼び掛けたが応じないため、捜査員が約9時間後の午後5時前に玄関から合鍵を使って突入、身柄を確保し、公務執行妨害の疑いで逮捕した。人質はいなかった。

県警によると、男は1人暮らしで、職業は不詳。逮捕容疑は、29日午前7時55分ごろ、男がライフル銃のような物の銃口を警官に向けた疑い。「覚えていない」と容疑を否認しているが、会話がほとんど成立しないという。県警は刑事責任能力の有無を慎重に調べる。

捜査員の突入時、男は何も持たずに床の上に座っており、抵抗もしなかったという。男は右手首に切り傷があり、病院に搬送された。県警は、男の部屋からライフル銃のような物を複数押収。銃弾はなかった。モデルガンの可能性もあるとみて、詳しく調べる。

県警によると、同日午前6時45分ごろ、付近の住民から粕屋署に「駐車場の前に車が止めてあり、出られない」と通報があり、署員が車の持ち主の男を訪ねたところ、立てこもったという。男は28日午後9時ごろ、車で町内を低速運転、署員が職務質問していた。この際、意味不明の言動があったという。

現場はJR篠栗線の篠栗駅から北西約1キロの住宅街。県警は現場アパートから半径50メートルにある約80世帯に避難を呼び掛け、約30人が公民館に身を寄せた。アパートから西に約300メートル離れた篠栗北中では、部活動をしていた生徒や教諭たち計約170人が一時、校内で待機。中学校の西隣にある北勢門小は保護者に対し、子どもだけで外出しないよう求める一斉メールを送信した。

引用:西日本新聞朝刊 2017/04/30

長時間にわたる立てこもり事件でしたが、被害者を出すことなく事件が解決したことに安堵いたしました。その後、人質はいなかったこと、ライフル銃はモデルガンの可能性があることなどが分かっています。また、容疑者には精神疾患の疑いがあるとの報道もなされております。

ニュース映像では多数の警察官がアパート近辺に配置され、上空には何機ものヘリコプターが飛び交っていたようです。

後からの情報だけをみれば、「男性は、精神疾患の可能性があるのに、警察が厳重に取り囲むほどの事態だったのか」と思う向きもあるかもしれません。

しかしそれまでの経緯として、迷惑駐車に関する警察官の訪問に応じず、ライフル銃のようなものを向けたという事実があります。警察が、万が一の事態を考え、近隣住民を避難させるのは当然のことであり、「立てこもり」として事件化することも致し方なかったのではないかと思われます。

むしろ議論すべきは、「会話がほとんど成立しない」というこの男性に対して、以前よりなんらかの支援が行われていたのかということです。病識がなく医療にかかったことがない方なのか、あるいは、過去に入通院歴があるものの受療中断してしまった方なのか。通院はしていたが、症状が重篤になってしまった方だったのか……。もし、行政や福祉関係者による支援が適切に行われていたのであれば、今回のような自傷他害の恐れのある行動を起こした際にも、ここまでの事件化にすることなく、対応がとれたのではないかと思います。

今回の立てこもり事件は、男性が精神疾患であるとするならば、適切な支援を受けられていないことが思わぬ事件化を招いてしまうという事例の一つではないでしょうか。「地域移行」が進められる今、精神疾患(あるいはその疑い)がある方に対する、行政や福祉関係者による支援は必須であることが分かります。

国の方針として、「地域移行」「共生社会」を目指しているわけですから、たとえば身近に精神疾患(あるいはその疑い)があり、医療や福祉のケアを受けられていない人がいた(発見/遭遇した)とき、地域住民はどのような対応をとるべきなのか、分かりやすい指針が必要です。

また、自分の住んでいる自治体が、この問題にどのように取り組んでいるのかということも、知っておきたいところです。そして各自治体は、精神保健福祉法等を根拠とする実際の運用について、個人情報の取り扱い等を含め、一般市民とともに議論を重ねるべきではないでしょうか。

メディアも、単純に事件を報道して終わりにするのではなく、各自治体の取り組みや、一般市民ができることなどの切り口からも、こういった問題を取りあげてほしいと思います。