月刊コミック@バンチで連載中の『「子供を殺してください」という親たち』(電子版はコチラで読めます)ですが、本誌6月号の押川剛「現場ノート」では、「幼少期の不適切な養育環境や虐待(子供の目の前で家族に暴力を振るうなどの心理的虐待も含む)が、薬物・アルコール依存、非社会性パーソナリティ障害など精神疾患に関連すること」について記述しました。

参考とした論文の一つが、「不適切な養育と子どもの依存」(友田明美氏、福井大学教授)です。この論文では、児童虐待について以下を挙げています。

 児童虐待には、①殴る、蹴るといった「身体的虐待」②性的な接触をしたり、性行為やポルノ写真・性的な映像をさらす「性的虐待」③不適切な養育環境や食事を与えないなどの「ネグレクト」④暴言による虐待、子どもの目の前で家族に暴力を振るうなど家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス:DV)を目撃させる行為などの「心理的虐待」が含まれる。

また、児童虐待と精神疾患の関連性については、以下の記述があります。

7万人以上を対象とした疫学調査で、精神疾患は児童虐待に起因することが分かり、児童虐待をなくすと、物質乱用を50%、うつ病54%、アルコール依存症65%、自殺企図67%、静脈注射薬物乱用78%を減らすことができるという結果が出た。

さらに近年の研究では、精神疾患の原因の少なくとも一部は、脳の発達段階で負荷がかかることに起因すると言われているそうです。

弊社では長年、精神疾患(あるいはその疑い)がある方と、そのご家族を対象として業務を行ってまいりました。千件以上もの現場を見てきた経験から、精神疾患と家族(養育環境、家庭環境、親子関係など)の結びつきは、切り離して考えることはできないものだと考えています。

一方で、精神疾患と家族を結びつけて考えることに対して、批判の声があることも事実です。その代表的な声は「精神疾患を親や家族のせいにするとはいかがなものか」というものです。

もちろん弊社としても、すべてが親のせいだと言うつもりはありません。人が生まれもっている気質をはじめ、さまざまな要素(性格的要素、遺伝的要素、器質的要素、環境的要素など)が影響している部分も大きくあるかと思います。しかし、児童虐待により脳の発達段階でなんらかの負荷がかかり、それにより精神疾患が起こりうることは、研究でも明らかにされております。

弊社がこれまで携わってきたケースでも、親から「心理的虐待」といえる養育をされてきた子供は、少なくありません。上述した論文では、「心理的虐待」として「暴言」や「DVを目撃させる」といったことが挙げられていますが、他に、親が子供に対して行ってしまいがちな行為としては、以下のようなものがあります。

【言葉と行動が伴っていない】

・衣食住に関しては充分に与えているが、気に入らないこと(親の言うことをきかない、成績が悪い等)があると無視をしたり、嫌味のような言葉を投げかけたりする

・言葉では「かわいい」「愛している」と言うが、子供が話しかけても他のこと(スマホやネットなど)に夢中になっていることが多い

・子供には「お金がない」と言って禁止している消費(スマホやゲームの利用、買い物など)を、親自身は過剰に行っている

【夫婦の不仲】

・子供の前で夫婦喧嘩をする

・配偶者の悪口を子供に吹き込む

・子供の目の前で言い争うことはしないが、配偶者の言動が気に入らないと、物の扱いが雑になる、沈黙するなどして不穏な空気を出す

【子供の意思を尊重するようでいて、最終的には何ごとも親の思い通りに進める】

・「自分で決めていいよ」「好きなようにしなさい」と言いつつ、親の望まない選択をすると、「あなたは、××の方が好きじゃなかった?」などと遠回しに言い、従わせる

・(とくに母親にありがちな行為として)子供が意に沿わぬ行動をすると、具合が悪くなったり、さめざめ泣いたりする(子供に気を遣わせる)

【嘘を吐く】

・両親の馴れそめや出生に関することなど、根幹となるものについて嘘を吐く

・親や親族の経歴、学歴などについて嘘を吐く

・成長した子供が嘘に気づき、「なぜ嘘を吐いたのか」と問い詰められたときに、謝罪をしたり理由を説明したりするのではなく、開き直りや言い訳に終始する

【子供に関心がない】

・思春期など多感な時期に、親の興味がよそ(仕事や趣味、交際相手など)に向いてしまっている

・子供が勇気を出して真剣に相談していることに対しても、軽く扱うなど、誠実に向き合わない

・学校教師から家での様子とは違うエピソードを聞いても、そのことについて本人に確認したり、話をしたりしない

・「成績が良い」「ちゃんと登校している」といった表面的なことだけを見て「問題ない」と捉え、それ以上の関心を持たない

 

上記はいずれも、弊社が携わった子供たちやその親から聞き取った内容のうち、とくに共通する事項です。

もちろん、これらの行為を行ったからといって、必ずしも子供が問題行動を起こすようになるというわけではありません。親も人間ですから、ときには子供の前で感情的になってしまったり、関心がおろそかになってしまったりすることもあるでしょう。しかし、上述したような言動を繰り返し行っていれば、子供はその姿を見て育つことになり、社会に出たときに、親を模倣した所作や他人とのかかわり方などを行うようにもなります。

このような親の行為が子供の心に与える影響は大きいにもかかわらず、親自身には自覚がしにくいものでもあります。子供が問題行動を起こすようになってはじめて過去を振り返り、「しつけのつもりだった」「子供のために良かれと思ってやっていた」と語る親御さんもいます。また、身体的な虐待と異なり、第三者に発覚しにくいものでもあります。

もっとも重要なことは、親が子供に関心を持っていなければ、子供の人生がマイナスに動いたとき、そのサインを見逃すことになるということです。

☆弊社では子供の小さな変化を見逃さないためにも、日常の記録をお勧めしています↓