今年の四月から、全国の市町村自治体で介護保険の「新総合事業」がはじまっています。介護の分野は、障害の分野に先がけて「地域移行」が進められてきましたので、精神保健福祉分野の今後の動向を予測するにあたり、一つの材料になります。

ダイヤモンドオンラインの記事(介護保険の「新総合事業」開始で一体何が変わるのか?)では、「新総合事業」について以下のように記述されています。

要支援者だけでなく、その前段階の虚弱者を含めて「日常生活で何らかの手助けを必要としている高齢者を普通の地域住民がみんなで支えましょう」、「地域住民が結束し、助け合いの精神で頑張ろう」と耳触りのいいスローガンを打ち出している。

介護関連の資格を持つプロではなく、「困っているときはお互いさま」の心意気で隣近所の地域住民が手を差し伸べてほしい――。

プロの仕事として続けるには財源も人もが足りなくなるから、安価なボランティア的な事業に変えた、という指摘もある。いわば「安上がり」の介護を目指す。これを「互助」と説明する。

引用:ダイヤモンドオンライン 2017/05/24

結論をいえば、いよいよ財源も人材も足りなくなり、国民総出で……すなわち「自分たちのことは、自分たちで」ということなのでしょう。

記事によりますと、意欲ある住民の参加を促すために、自治体をはじめ社会福祉協議会(社協)、地域包括支援センター、企業、NPO、ボランティア団体、そして町内会・自治体などの地縁組織が間に入り、コーディネートを行っていくようですが、そもそも地域に縁のない人たちにとっては、なんとも分かりにくい構造になりそうです。これもまた、最終的には「自分に合った支援を自分で探すしかない」ということになるのでしょうか。

ちなみに精神保健に関しては、精神障害者地域移行・地域定着支援事業の内容が具体的に定められていることもあり、現在、(自治体にもよりますが)非常に手厚い支援が行われております。

弊社がサポートをしている対象者の中でも、入院治療を経て地域移行のレールに乗れた方に限っては、グループホームへの入所、訪問看護、自立支援等、きめ細やかなサポートを受けることができています。

一方で、いろいろな施設の方にお話を聞きますと、そこから真の自立(就労など)に至るには、かなり高いハードルがあるのも事実だそうです。もちろん、病状が安定せず就労が難しい方もいますが、中には、頑張れば自立にたどり着けそうな方であっても、現状で手厚いサポートが受けられるゆえに、就労の意欲を持たせること自体が難しい場合もあると聞きます。

そのような現実を目の当たりにしますと、いずれは介護の分野と同様、財源や人材がパンクする日が来ないとも限りません。またある本によれば、2050年の日本の総人口の平均年齢は53.4歳と予測されるそうです。そうなったときには、「支援」や「互助」を通り越して、社会全体が「老老介護」とならざるを得なくなります。

介護の現状を見ても明らかなように、国の制度とは、財源やその他の理由により刻々と変化していくものです。いま受けられているサポートやサービスは、決して永遠のものではありません。

日本では、障害をもつ方や、ひきこもり歴のある方に対して「就労」や「自立」を押しつけてはいけないという風潮がありますが、真剣に日本の将来を考えたときには、公的制度や公的支援に頼り切るばかりでは、どこで梯子をはずされるか分からないのが現実です。

完全な就労や、完全な自立を望むことが難しいとしても、就労や自立に向けて経験を積むことが、厳しい未来を生き抜く力になるのではないでしょうか(もちろん、重度の障害をもつ方に関してはこの限りではありません)。患者さんのサポートをする立場としても、そのことは常に肝に銘じていきたいと考えています。