親が幼児に手をかける殺人未遂が相次いでいます。

3歳長男と入水自殺図った34歳母逮捕 殺人未遂の疑いで大阪府警

長男(3)を抱いたまま川に入り、長男を殺害しようとしたとして、大阪府警住吉署は31日、殺人未遂容疑で大阪市住吉区の無職女(34)を逮捕した。調べに対し「子供と一緒に死ぬつもりだった」と容疑を認めている。女は精神疾患の疑いがあるという。 逮捕容疑は30日午後10時ごろ、大阪市住吉区遠里小野(おりおの)の大和川で、長男を抱いたまま川の中に入ったとしている。水深が女の胸ぐらいまで達した際、怖くなって川から出たため長男にけがはなかった。 同署によると、女は夫と長男との3人暮らし。女は川から出た後、自ら近隣住民に110番を依頼したという。長男はその後、児童相談所に保護された。

引用:産経新聞 2017/5/31

過去のトキワレポートでも取りあげたように、幼児を被害者とする殺人(未遂)、無理心中の背景には、「産後うつ」がある場合が少なくありません。このことに関しては、厚労省による対策もはじまっています。

そしてもう一つのニュースは、精神疾患と家族の関係について考えさせられるものです。

<乳児殺害未遂>妻は産後うつ傾向

生後3カ月の長女を殺害しようとしたとして、父親の会社員坪池和寛容疑者(42)=仙台市宮城野区平成1丁目=が逮捕された殺人未遂事件で、坪池容疑者が「殺そうと思った。疲れた」などと供述していることが30日、仙台東署への取材で分かった。同署が動機の解明を急ぐ。

仙台市によると、容疑者の30代の妻は産後うつの傾向があると判定され、市の支援対象だった。東署は事件との関連について慎重に調べる。

市は生後1カ月の新生児宅を保健師らが全戸訪問し、「産後うつ調査票」の記入を求めている。記入結果から市は「継続支援が必要」と判断し、宮城野区の担当者が対応していた。

東署によると、坪池容疑者は29日夕、長女の首にタオルを押し当てて殺害しようとした殺人未遂容疑で逮捕された。目撃した妻が容疑者を制止して119番。長女は命に別条はない。

引用:河北新報 2017/5/31

弊社では、家族からの相談を主に受けております。その大半は対象者の「親」からのものになりますが、中には、「配偶者」(夫もしくは妻)からの相談もあります。

「親子」と「夫婦」では、病気に対する受け止め方も異なる印象を受けます。交際の段階から病気のことを知っていて、理解があって結婚した夫婦はともかく、婚姻後の発症となると、「こんなはずではなかった」という思いを抱きがちです。

弊社の経験では、男性(夫)の場合、職場のストレスや過労から「うつ病」や「アルコール依存症」を発症したケース、女性(妻)の場合は、「産後うつ」や「(遅発性)統合失調症」を発症したケースなどが多くありました。

とくに妻が精神疾患に罹患したケースでは、夫にヒアリングをしていくと、「仕事が忙しく帰りが遅い」「いつも疲れて帰宅する」といったことから、妻の病気のサインになかなか気づかないことが多く見受けられました。誰の目から見てもおかしい、となってから夫も事態を把握しますが、その頃には本人を説得することもままならず、夫婦ともに疲弊していくことになります。

病気になれば、それが身体疾患であっても、精神疾患であっても、本人はもちろんのこと、看病をする家族にも少なからず負担がかかるようになります。

とくに精神疾患の場合、第一に、病気に対する理解を深めることがなかなか難しいものです。そして頭では理解ができるようになっても、妄想や幻覚にどう付き合えばよいのか、自傷他害行為が起きた時にどうすべきかなど、現実対応には困難も伴います。それは「思いやり」や「愛情」といった気持ちの部分でなんとかできる問題ではありません。家族だからこその悩み、苦しみもあるでしょう。

ことに夫婦となると、そもそもが他人同士です。病気が理由とはいえ、感情のコントロールがきかないタイプの患者さんとなると、夫を始終、責め立てるようなことも起こりがちです。夫は夫で、そのような妻に対して距離感が芽生え、離婚が頭をよぎることもあります。

弊社への相談でも、「医療につなげたい」と言いつつ、実際に業務をはじめてみると、「今後のことは、できれば実家(本人の親)に任せたい」とおっしゃる方もいます。ときには、「どうしたらうまく離婚できますか」という身も蓋もないご質問をいただくこともあります。

親子とは違い、夫婦とはなかなかシビアなものだな、と感じる瞬間です。

子供が精神疾患や長期のひきこもりで、医療や支援につながれていない家庭では、親もまた、うつ病などを患っているケースが少なくありません。これは、家族の問題に携わる専門家であれば、共通する認識でしょう。

そしてこのことは、夫婦間でも起こりうることです。弊社が見てきた限りでは、夫婦、とくに妻が精神疾患を患っている場合には、夫がうつ病になるというよりは、「夫が、妻の病気に感化されている」という事例が多かったように思います。

たとえば過去に弊社が携わったケースでは、妻の被害妄想にどう対応したらよいか分からず、曖昧な肯定を繰り返しているうちに、夫もまた現実感覚をなくしてしまった、という事例もありました。夫は、妻に心中を持ちかけられていましたが、否定する気力もなく、言いなりの生活を送っていました。その対応が、妻の病状悪化に拍車をかけるという悪循環で、弊社が介入したときには、夫は妻の深夜徘徊に付き添い、連日、夜の町を歩き回っているような状況でした。

このケースでは、病気の妻を医療につなげたあと、夫だけでは対応が難しいと考え、面会時には弊社が付き添い、対応のアドバイスを重ねました。数ヶ月経ってようやく夫も心身の健康を取り戻し、「これまで自分がいかに妻に対しておかしな対応をしてきたのか、理解できるようになりました」と、おっしゃるようになりました。

本日取りあげたニュースを見て、乳幼児に手をかけた母親や父親を責めることは簡単です。しかしその背景にある精神疾患のこと、そして病気が家族に与える影響についても思いを馳せ、理解を深めていかねばならないと感じます。