九州北部の豪雨災害では、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々には心から御見舞申し上げます。弊社も業務柄、九州とは縁が深く、関係者の皆様からご心配のお声をいただきました。おかげさまで無事に過ごしております。まだ不安定な天気が続いていることもあり、一日もはやく日常生活が戻ってくることを願うばかりです。

――――――――――――

さて、前回のブログで妄想性障害について触れましたが、最近の弊社への相談では、「妻が精神疾患」という夫からの相談も増えています。診断名は、「(遅発性)統合失調症」や「妄想性障害」とつくことが多く、夫は、自らに向けられた被害妄想に疲弊し、相談に来られます。

核家族(夫・妻・子供)の構成で、「子供が未成年」「妻が就労をしておらず、他者との交流も少ない」というケースですと、妻の病気に気づけるのは夫だけ、ということになります。しかし夫も会社勤めをしていると、忙しさにかまけて妻の発症を見過ごしてしまい、未治療のまま長期間を経てしまうこともあります。

弊社への相談に関して言えば、子供が発症したケースでは、親が「病気には気づいていたが、うまく医療につなげられなかった」という内容が多いですが、妻が発症したというケースでは、夫は「何かおかしいとは思っていたが、精神疾患とは思わなかった」とお話しされます。

夫や妻の両親にヒアリングをしながら過去を振り返ってもらうと、子供を産んだあたりから本人に異変が起きていることが分かり、あくまでも推測にはなりますが、産後うつや育児ストレスがあったのではないか? と思えることも多いです。その当時に積極的な介入があれば、予後はだいぶ異なるはずですが、たいていは見逃してしまっています。

妄想性障害となると妄想の内容も現実に関連することが多く、周囲が気づかないうちに、じわじわと病状が悪化していきます。夫が弊社に相談に来られたときには、発症から5年、10年と経過しており、こうなると医療につなげることも難しく、また、医療につなげたとしても劇的な快復がみられにくく、最終的に「離婚」という話になることも少なくありません。

そこでここでは、夫の立場として、妻の病気を早期に発見できるよう、特徴といえるポイントを挙げたいと思います。

★発症を疑ってみるサイン

・出産後、性格や物言いがかわった。とげとげしくなった感じがある。

・些細なことで非常に感情的になる一方、脈絡なく機嫌が直る。

・一般的に理屈に合わない、夫からは理解しがたい理由で、頻繁に転居を訴える。

・健康志向がことさらに強い(放射能の影響や、無添加・無農薬などにこだわりすぎる)。

・子供の様子が変わった(常に母親の顔色を伺っている、表情や表現に乏しいなど子供らしくない)。

また、参考までに本人の背景としてよくあるものを以下に挙げます。

・本人の両親が不仲だったなど、複雑な家庭環境で育った。

・本人と実母が心情面で密着している。

・両親が世間体の強い人で、本人が未だに顔色を伺っているフシがある。

・友達関係含め、人付き合いが極端に少ない。

・あるいは、人付き合いはあるのだが持続しない。よくトラブルを起こす。

・キャリアアップではなく、人間関係のトラブルなどでの転職が多い。

念のため申し上げますが、上記があるからといって、即座に「病気」と決めつけるわけではありません。ただ、核家族で実家両親や親族との交流も少ない場合、発症に気づけるのは配偶者だけであり、また、発症後の対応も配偶者だけでおこなっていく必要があります。病状が悪化してからでは、本人への日常対応だけで疲弊してしまい、医療につなげるといった行動にまでたどり着けないこともあるため、警鐘を鳴らしたいと思います。

夫にありがちな思考としては、妻の感情の変化を、「機嫌が悪いのだろう」「疲れているのだろう」などと捉えてしまうことです。妻が被害妄想を訴えても「(現実に)よくあることだ」と流してしまっています。とくに女性の(遅発性)統合失調症や妄想性障害では、炊事や洗濯、掃除など身の回りのことは変わらずにこなせていることも多く、発症に気づきにくいところがあります。

妻の被害妄想と思しき言動に適当に相づちを打ったり、軽く受け流したりすることは、妄想の固定化にもつながります。過去の相談では、妻から「食事に毒を盛っているだろう」「娘に虐待をしただろう」などと言い募られた夫が対応に困り、事実ではないことも肯定し、謝罪を繰り返していた例がありました。結果として、妻の妄想は完全に固定化してしまい、夫婦仲は最悪の状態に陥り、まだ年若い子供も家を出て寄りつかないなど、家族崩壊に至っていました。

一般に、統合失調症の長期予後を考える上で重要なことは、「未治療期間」を極力なくすことと言われています。転帰(治療の経過および結果)として寛解を目指すに当たっては、長期の未治療期間が大きく影響するからであり、そのためには、家族が早く気づいて医療につなげることが重要であることは言うまでもありません。

夫(男性)ほど、専門家に相談すること自体、「ハードルが高い」とおっしゃる方も多いものですが、夫婦だからこそ、何かあったときには「あなたの健康が心配だから、受診しよう」「一緒にカウンセリングを受けてみないか」と言えるのではないでしょうか。

子供の年齢によっては、精神科医療だけでなく「子ども家庭支援センター」(※乳幼児の場合。各自治体で名称が違います)や「児童相談所」(※未成年の場合)に相談することも可能です。

そして、当たり前のアドバイスにはなりますが、夫婦・家族として生活をともにするからこそ、まめにコミュニケーションをとる、会話を大切にする、ちょっとした変化を見逃さない、といった日常の努力を怠らないことです。