摂食障害について、江川昭子氏による別のシリーズ【塀の中の摂食障害】も、非常に興味深い内容となっています。

女子刑務所の患者増加~彼女たちはなぜ万引きを繰り返すのか

知られざる女子刑務所での壮絶な闘い

記事中では、女子刑務所においても、摂食障害を抱える受刑者が増えていることが指摘されています(以下、江川氏の記事より引用)。

 女子刑務所には、A子のように摂食障害を抱える受刑者が増えている。

そのことが問題視され、法務省では2013年から毎年、「拒食、嘔吐等を繰り返す等により、他の受刑者と異なる処遇を行う女子受刑者」(摂食障害受刑者)の数を調査している。同年には124人で、全国11カ所の女子刑務所と3つの医療刑務所に収容されている女子受刑者4159人の3.0%だった。それが、その後も年々増え、今年7月1日現在には199人。女子受刑者の20人に1人以上が摂食障害という状況だ。

しかも……。

「実際にはもっと多い可能性があります」

そう指摘するのは、摂食障害学会副理事長で内科医の鈴木眞理・政策研究大学院大学教授だ。

「社会では過食嘔吐をしていたけれど、体重はそこそこ普通にあり、医療機関にもつながっておらず、本人が隠している場合、見逃されてしまうことが考えられますから」

罪名は窃盗がダントツに多く、今年の調査でも139人と約7割を占める。中でも132人が食品などの万引きだ。年齢は20代から60歳以上までと幅広い。

摂食障害での習慣的窃盗には、さまざまな亜群(過食を目的に盗む、強い抑うつ状態から衝動性が著しく高まり盗む、抗不安薬内服による酩酊状態により盗む、など)が存在すると考えられていますが、摂食障害で常習累犯窃盗犯の場合には、嗜癖化していると考えざるをえない症例が大半だそうです(和歌山刑務所における窃盗癖の実際と摂食障害/京都大学)。

精神科医の永田利彦氏は、摂食障害の万引き、治療と刑罰のどちらなのかと題するブログの中で、以下のように述べています。

刑罰より治療が優先されるべきだというのが小生の意見です。一方で、刑罰という歯止めが無ければ、治療への動機付けが乏しくなる症例があることも確かです。

なお、我が国では、摂食障害患者における窃盗行為については、病理との関連が指摘され、刑罰よりも治療が優先されるべきといった意見もありますが、統一した見解には至っていません。弊社が常々指摘しておりますとおり、対応の難しい疾病や患者さんに関しては、事件化し、司法に振られるという傾向が、ここにもあらわれているように思います。

そのような中、北九州医療刑務所では、摂食障害のある女性受刑者の更生プログラムを策定し、2014年4月より本格運用していますが(更生へ摂食障害ケア 女性受刑者用プログラム 北九州医療刑務所 全国初)、医療刑務所含め刑事施設での治療には限界もあります。病気が治ったかどうかに関係なく、刑期が終われば治療や更生プログラムもいったん終わることになり、出所後にどう治療意欲を継続するかは、大きな課題です。

やはり、摂食障害での窃盗が習慣化、嗜癖化してしまう前に、適切な医療につながることが重要であり、それが本人の意思や家族の助けだけでは難しい場合、第三者の介入をどうすべきかを考える必要がありそうです。

余談ではありますが、近年は、女性受刑者の数自体が増加しており、法務省は来年度にも、女性刑務所に男性刑務官を配置する方針を決めるなど、女性刑務官の不足が深刻な問題となっています(女性刑務所に男性刑務官…110年ぶり見直しへ)。増えつづける女性受刑者の問題も含め、どのように対応していくのかは緊急の課題です。

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『「子供を殺してください」という親たち』コミックス第1巻、重版決定! ありがとうございます。