45歳の息子が、3年前に亡くなった父親を自宅に放置していた事件です。今回気になったのは、その息子がセーラー服を着用していたことです。

「父親は3年前に死にました。そのまま自宅に置いています」

8月23日夕方、東京・練馬区役所に生活保護受給の相談に訪れた男のひと言で事件が発覚した。警察官が自宅を調べると、浴槽のふたの上には8つのポリ袋に分けられた白骨化した遺体が置かれていた。

遺体を「父だ」と話したことから、警視庁は同24日、死体遺棄容疑で無職の竹田英俊容疑者(45)を逮捕。同容疑者は父親の遺体と3年間、一緒に暮らしていた。

さらに驚くのは逮捕時の服装。胸元に赤いスカーフがついた紺色のセーラー服姿だった。「駅前で見た」「店の前を歩いていた」など目撃証言は多く、近所でも話題の人物だったのだ。

「セーラー服を着だしたのは今年になってからです。以前から女性の洋服を愛用していたわけではないと思います」と、同じ団地に住む60代の女性、Aさんは話す。近所のコンビニ店の女性店員も、 「セーラー服は拾ったもののようで、毎日着ていました」

引用:週刊女性2017/9/8

記事によると、容疑者の男性は長く父親と2人暮らしでした。近隣の人の話では、父親の姿が見えなくなって以来、男性は屋外で食事をとったり、コンビニのトイレで身体を拭いたりするなど、奇行が目立っていたといいます。さらには、「拾った」というセーラー服を着用していました。

女装(男装)も趣味や嗜好の一つとはいえ、この男性に限って言えば、それまでの経緯や日頃の様子から、セーラー服の着用には、趣味・嗜好とは異なる意味があったのではないかと思えます。

弊社への相談事例では、統合失調症を患い受療中断していた男性がある日、女装をして街を徘徊し、地域住民から警察に通報され保護されたケースがありました。のちに弊社が介入し、症状が落ち着いたところで「あのとき、なぜ女性ものの衣類を身につけて街を徘徊したのか」尋ねたところ、「そうするように命令する声が聞こえた」と答えました。

彼の心の中までは分かりませんが、ご家族の話によれば、彼の症状が悪化したのは、それまで身の周りの世話をしてきた親御さんが病に倒れてからとのことでした。肉親との別離、環境の変化などが病状の悪化につながり、思いもよらぬ行動に走らせることは、よくあることといえます。

そしてこのケースでは、精神疾患が疑われたことから警察に保護され、彼のきょうだいに連絡が入ったことで、きょうだいも事の重大さに気づき、医療につながることができました。

引用した事件の容疑者が精神疾患であったのかどうかは明らかにされていません。現実問題として、自分の身近でこのような事例があったとき、それが精神疾患によるものかを判断することは、難しくあります。

近隣に住んでいるなどある程度情報が分かる方で、精神疾患が疑われ、なおかつ自傷他害の恐れのある方がいる場合には、管轄の保健所に診察や必要な保護を申請(精神保健福祉法第22条)することができますが、この申請について、保健所は積極的ではありません(詳しくは押川の著書『「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫)』をお読みください)。

そこで近隣住民としては、「関わらない」「見て見ぬ振りをする」という選択肢をとるしかない場合も、多いように思います。とはいえ、「関わらない」ことが解決につながるわけではないこともまた、事実です。

保健所への相談(申請)は敷居が高いのであれば、地域の自治会長、民生委員の方に相談するという方法もあります。また、あくまでもイレギュラーではありますが、弊社が経験した事例のように110番通報によって警察に保護(警察官職務執行法第3条)されたことをきっかけに当事者家族に連絡が入り、医療につながることができる場合もあります。

個人主義が強まるいっぽうで、地域住民にも最低限の知識と見守り、そして少々の「おせっかい」が求められているのを感じます。

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『「子供を殺してください」という親たち』コミックス第1巻、重版決定! ありがとうございます。