著者の友田明美氏は、福井大学子どものこころの発達研究センター教授であり、小児精神科医として、福井大学医学部付属病院(子どものこころ診療部)で、こころの発達に問題のある子どもの診断、治療、支援にあたっています。その経験を通じてリサーチを続けた結果、大人の不適切なかかわり(マルトリートメント)によって、子どもの脳が変形することを明らかにしています。

これまで、学習意欲の低下や非行、うつ病や摂食障害、統合失調症などの精神疾患は、主に生来的な要因がもとで起こると考えられてきました。しかし、脳科学の研究が進むにつれ、子供時代に受けたマルトリートメントが脳に悪影響を及ぼし、結果、こうした症状が出現、もしくは悪化することが明らかになってきています。

引用:子どもの脳を傷つける親たち(p15)

マルトリートメントとは、主に虐待(身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待)を指しますが、本書によれば、面前DV(子どもの目の前で配偶者に暴力を振るうことや激しい夫婦喧嘩を見せること)や、行きすぎたしつけ、子どもを否定するような言動など、「子どもが傷つく行為は、すべてマルトリートメントである」そうです。

筆者は、「どんなに気をつけて育児をしていたとしても、マルトリートメントの経験がまったくない親などいないでしょう」と指摘しつつ、マルトリートメントとは何か、それが子どもの脳に及ぼす影響、さらには傷ついた脳をどう回復させていくかについて、科学的なエビデンスを元に分かりやすく解説しています。

興味深いのは、このような家庭では、親もまた「不適切な養育」によって育てられてきたケースが多く、治療の過程では子どもだけでなく親へのアプローチも必要不可欠であると指摘されていることです。そして友田氏は、繰り返し、早期介入(治療)の重要性を訴えています。昨今は、養育者のリスク管理にも着目し、予防的側面からの研究も進められているようです。

前半はやや専門的な内容が中心ですが、後半には、「積極的に使いたいコミュニケーション」や「避けたいコミュニケーション」、子どもの愛着形成のために重要なことなどが端的に述べられています。子育て中の親御さんだけでなく、子どもの養育に携わる専門家も、一読すべき本です。

なお、友田氏の論文については、以前にもブログ「不適切な養育」で引用しています。こちらも併せてお読みください。

※現在、コメントは承認制となっております。コメントの反映にしばらく時間がかかりますことをご了承下さい。