弊社が携わる対象者は、現在、30~40代の方がメインですが、最近の傾向として、主病名(統合失調症や強迫性障害)の他に、実は幼少期から、発達や知的面での遅れがあったのではないかと思われるケースが増えています

それは、本人が医療につながり主病名の治療が進んで興奮状態が落ち着いてくると、むしろ如実に表れてきます。たとえば院内での過ごし方や退院後の生活について、病院職員の方も交えて面会で話し合い、その時は本人も理解を示して決めたはずのことを、次の日には「そんな話はしていない」と主張します。

もう一度よく話を聞いてみると、皆で話し合った内容がうまく理解できていなかったり、皆とは異なる解釈をしていたり、ということがよくあります。知能検査や心理検査を受けると、発達障害等の確定診断までには至りませんが、たとえば聴覚的な情報を記憶したり、頭の中で操作したりして処理することが苦手、社会規範を柔軟に取り入れる力が乏しいといった結果が出ています。

以前、そのような患者さんへの関わりについて精神科医とお話したときには、「耳から聞く情報だけでは入りにくいこともあるので、文字にしたり図にしたりして、説明してあげてください」と教えていただいたこともありました。

とくに、今30~40代の方の幼少期には、「発達障害」の周知度も低く、親御さんも、本人の特性を認識せずに育てています。本人が専門学校や大学などに進学できている例も多いのですが、時系列で振り返ってみると、ところどころで学習面や人間関係における躓きが見られ、かなり無理をしていたのではないかと思うこともあります。

その特性に気づかないまま家族が本人と接すると、「会話はあるが、真の意味でのコミュニケーションが取れていない」ということが起こりがちです。親は「本人とは何度も話しあった」「気持ちを尊重してきた」と考えていますが、本人は「親は自分の意見を聞いてくれない」「自分のことを理解してくれない」と感じているのです。

結果的に、「言った、言わない」「嘘を吐いた」「約束を破った」…というような話になってしまい、話をするたび喧嘩になるか、逆に会話が皆無になるなど、関係が悪化していきます。親子だからこそ感情的にならずに話をすることが難しい側面もあり、親子間のコミュニケーション自体に、第三者の介入が必要なケースも見受けられます。

弊社への相談では、すでに事態が深刻化しているケースが多いため、優先順位として対象者の方に注力することになりますが、そもそも親自身が他者とのコミュニケーションが苦手であったり、それゆえに過去に相談した行政職員との中で、言いたいことを伝えきれていなかったり、主旨を取り違えていたりするケースも少なくありません。

なお、『「子供を殺してください」という親たち』の出版後は、まだ幼い子供をもつ親御さんから、「うちの子も障害があるのだが、将来が不安だ」というご感想をいただくこともございます。しかし、親族や近隣との関わりも少なく、家族が孤立しがちな現代社会においては、障害が理由とはいえ、幼少期のうちから家族以外の大人(専門家)と関わりを持てる機会があることは、プラスの側面もあるのではないかと思います

近隣付き合いの少なくなっている現代社会であればこそ、気軽に相談できる第三者とつながることはとても重要です。

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