押川のブログでも触れた寝屋川の監禁事件ですが、続報によると、被害者の女性(長女)は小6で精神疾患と診断されたものの、障害者手帳の申請はしておらず、福祉行政による介入はなされていなかったようです。一方で、障害者年金を受給していたとの報道もありました。

小6で精神疾患と診断、支援は受けず…監禁死

この両親が我が子を監禁するに至った経緯は、今後の捜査や裁判を経て、明らかになるかと思います。ここでは、事件との直接の関係はありませんが、女性患者特有の対応の難しさについて、弊社が経験したことを述べてみたいと思います。

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女性患者(親からすると「娘」)に関する相談で特徴的なのは、すでに定期的に医療にかかっていながら状況が改善せず、親子関係はむしろ悪化しているケースが多いことです。親(母親が多い)が率先してさまざまな医療機関を探してきては、通院先を転々としているケースも非常に多く見られます。

一般的な精神科病院だけでなく、民間療法や漢方など健康食品、心理セミナー等にも手を広げ、「これまでに、家が一軒建つくらいの治療費を遣いました」という親御さんもいます。親としては、子供の病気を治したい一心の行為ですが、時系列で並べてみると、「ドクターショッピング」をしているとしか思えない状況です。

なぜこのようになってしまうのでしょうか? 背景を考えてみると、やはり母と娘で共依存関係に陥っているケースが圧倒的に多いです。この密着度の強さは、昭和以降の女性の社会進出とも相関しているように思います。つまり、母親も学歴を身につけることで、病院を選別したり、医師に物申したりできるようになりました。子供の本質を見て医師を選別できればよいですが、ブランド志向で医師や治療法を選んでしまっている親も、多く見受けられました

また、母親が高学歴で仕事でも成功を収めているようなタイプですと、プライドが邪魔をして夫や友達にも悩みを打ち明けられず、専門家に対しても素直になれない(親子関係や生育歴の問題を認められない)……といった状況になりがちです。結果として母娘で孤立し、娘は母親に反発しながらも、母親しか依存できる相手がいないため、執着も強くなります。

結婚や出産に強いこだわりを持つことも特徴です。といっても、患者本人が家庭的であるとか子供好きでというよりは、「友達やいとこは皆、結婚して子供もいるのに、自分だけできなくて惨めだ」というように、見栄や世間体に縛られています。母親も同様の考えであるために、「早く元の〇〇ちゃんに戻ってほしい」「周囲の人に知られないうちに、治してあげたい」と、結果を焦る傾向にあります。

ところが、主病名に加えパーソナリティ障害が併存している場合(または、診断はついていないがパーソナリティに問題がある場合)には、精神症状が軽快しても、些細なことが原因で家族と口論をしたり、興奮してやけを起こしたり、または自殺企図など周囲を振り回す行動をしたりすることがあります。

親はそれを「病気(主病名)が治っていない」と捉え、今までの治療をやめて、別の治療法を探すことに奔走します。気分転換と称してマンションに一人暮らしさせたり、親子で海外旅行に行ったりしているケースもありました。

このような時間が長く続くと、親としては娘に治療を受けさせ、療養させているつもりであっても、客観的にみたときには、本人のわがままに応じた生活をさせているに過ぎなくなります。パーソナリティの歪みは増長し、一般的な社会生活からは、どんどんかけはなれていきます。

一方で、男性患者に比べると、女性患者のほうが “社会性”を演じることは上手です。たとえば、親以外の第三者には礼儀正しく振る舞ったり、利用したい相手の前では甘えたり女性らしさを見せたりすることができます。ただしそれを継続することは苦手で、つまるところ「入院治療を続けるほどではないが、一般的な社会生活に適応するのは難しい」となってしまいます。

専門家にとっても、女性患者に対応するに当たっては、男性患者とは異なるコミュニケーション能力が求められます。それゆえに、女性患者の専門病棟をもつ精神科病院はとても少ないです。かといって、男女混合病棟では異性間のトラブルを起こす可能性があり、加えて近年は早期退院の流れもあることから、複雑対応困難な女性患者の受け入れ先は、ほとんどないと言っていいでしょう。これは弊社の実感だけでなく、医療従事者の間でも、議題としてたびたび上がることだと聞いています。

専門家の間では周知の事実ですが、その現実を知らない家族も多くおられます。女性患者を抱えているご家族で、今現在、親身になってくれている専門家がいる場合には、その人間関係を大事にしてほしいと思います。そして、治療の成果を急いで求めるのではなく、病気以外のところでの親子(母子)の関わり、適切な距離感などを、今一度考えてみましょう。

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